米シカゴ大学では、公衆衛生・コンピュータサイエンス・経済・医療政策などの専門家を集い、COVID-19への学際的研究プロジェクトを多く立ち上げている。今夏、そのうち3つのプロジェクトがC3.ai Digital Transformation Institute(DTI)から大規模な研究資金を受けるなど、研究成果に対する期待は大いに高まっている。
特にCOVID-19パンデミック初期には、この感染症に伴う罹患・死亡について深刻な健康格差が観察された。ラテン系・アフリカ系のアメリカ人はそうでない者に比べ、新型コロナウイルスの感染で3倍、死亡で2倍を記録することを米国疾病予防管理センター(CDC)が公表した。多くの専門家が「健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health)」に目を向ける新たな機会となった。シカゴ大学のニュースリリースによると、同大学のAnna Hotton博士は、社会的因子とウイルス感染症の拡大について研究を進めてきたが、このほど、COVID-19への研究フォーカスの拡張を進めるという。
研究チームは、エージェントベースモデリングを用い、構築済みのシカゴ在住270万人における感染症拡大モデルにCOVID-19を加える。また、公共交通機関での移動時間や在宅ワークの導入レベル、世帯人数など、大量の候補変数の中から、モデルに加えるべきものを機械学習を利用して選択する。Hotton氏は「COVID-19においても、感染への脆弱性には社会的要因が多大に関与する。健康の不平等を是正するための手助けをしたい」と語っている。