医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例言葉遣いからアルツハイマー病を高精度に識別するAIツール

言葉遣いからアルツハイマー病を高精度に識別するAIツール

米ニュージャージー州ホーボーケンに所在する私立大学・スティーブンス工科大学の研究チームは、表出する言語パターンからアルツハイマー病を95%以上の精度で識別するAIツールを開発した。これにより、既存の頭部画像スキャンや対面での質問回答型試験によるスクリーニングを置き換える可能性があり、大きな注目を集めている。

Health IT Analyticsが昨日報じたところによると、研究チームはattention mechanismを導入した畳み込みニューラルネットワーク(CNN)によって、このAIツールを構築したという。アルツハイマー病の診断がある者とない者に「瓶からクッキーを盗む子どもの絵」を見せ、状況を文章によって表現させた。チームは個々の文を構造的に分解し、512次元の特徴量ベクトルとしてアルゴリズムをトレーニングすることで高い識別精度を実現させた(注1)。

研究を率いたK.P. Subbalakshmi教授は「将来的には、メールからSNSまであらゆる投稿における任意のテキストから、アルツハイマー病を診断できる可能性がある」とする。チームは現在、英語以外の言語への拡張に向けたデータ収集と、失語症や脳卒中、外傷性脳損傷、うつ病といった他疾患でのアルゴリズム生成にも取り組んでいる。

注1) Pythonでは形態素解析用の外部モジュールが充実しており、比較的簡単に同種のアプローチを再現できる。形態素解析ライブラリのJanome、単語のベクトル表現技術であるWord2Vecを利用するためのGensim、深層学習ライブラリのPyTorchが扱いやすい。なお、開発環境としてGoogle Colaboratoryを使用している場合、Janomeのみプリインストールされていないのでpipコマンドによるインストールが必要。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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