皮膚科におけるAIの使用は強力なツールとなることが十分に期待されている。しかし、そのツールが臨床における意思決定、および患者の転機に与える影響については未知な部分がまだまだ多い。
学術誌 Medical Journal of Australiaに発表された論文では「皮膚がんの診断と治療に対するAI使用」のメリット/デメリットが論評されている。機械学習アルゴリズムが専門医の診断能力を上回る可能性が各所で示されてきた。また近年、メラノーマ(悪性黒色腫)の上皮内がんとしての診断が10万人当たり32例(2004年)から10万人あたり80例(2019年)と増加傾向にあることなども、診断支援AIツールの役割拡大が期待される要因のひとつである。しかし他方、著者らは臨床医がアルゴリズムの結果に過度に依存することでスキルアップが困難になる可能性や、熟達した診断医が不足し業界全体がパフォーマンス不足に陥ることなどを危惧している。
臨床医の評価の前にトリアージとして使用されるAIシステムはリスク分類を自動化し、現場の作業負担を改善し、専門科受診をタイムリーなものにする。一方で、臨床医の診察後に機能するセカンドオピニオンとして機能するAIは、診断感度を向上させ、不要な生検を減らすことができる。両者を比較すると後者の方が現在の臨床のワークフローと密接に連携するため、成熟した医療領域では好まれる可能性が高いと、著者らは記している。
また著者らは、一般公開されているスマートフォンのAIアプリにも安全性の面から注意を促している。医療者の監視下にない、消費者が独自に使用する診断装置は推奨されるには慎重なテストを必要とする。これからも臨床医は最終的な診断責任と、高いレベルの臨床洞察力を維持しなければならないと、結論づけている。