イスラエル発祥のスタートアップ「Nano-X」は、金属フィラメントの代わりに半導体を使用してX線を発生させる画像装置の開発を行っている。19世期のX線発見以来、基礎的な技術が変わらなかった産業に対して、Nano-Xは変革を起こそうとしている。
Bloombergが報じたところによると、Nano-Xは先月8月のNasdaq上場で約20億ドル規模の企業価値が付けられている。Nano-Xによると、半導体から放射線を発生させる技術によって、画像撮影の際の放射線量が低減されるとともに、従来の大型冷却システムなどが不要となり装置が小型化され、製造コストも数分の一に抑えられるという。同社の技術は、ハイエンドのCTスキャンへの利用ではなく、大がかりな装置を購入する余裕がない小規模医療施設における、骨折や出血などの評価が対象と予想されている。また、高速無線接続によって救急車やヘリコプター内での画像スキャンを実現できる可能性もある。
Nano-Xへの期待が先行する一方で、その技術に懐疑的な意見も少なくない。現在まで装置に対する規制当局からの承認はいずれの市場でも得られていない。米FDAに対しても承認申請が提出されたものの、承認プロセスにはさらに数ヶ月かかるとの予想がある。MASSDEVICEの報道によると、Nano-Xには富士フイルム、中国 Foxconn、韓国 SK Telecomらが出資しており、ユニットの生産・供給や無線接続の支援にあたるとみられている。果たしてNano-XはX線装置に世紀の革新を起こすことができるだろうか。