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クッシング病の術後遅延寛解を予測する機械学習モデル

脳下垂体部の腫瘍によって、過剰な副腎皮質刺激ホルモンが分泌される疾患をクッシング病と呼ぶ。外科手術による腫瘍摘出は根治療法となり得る一方、全例が即時寛解(immediate remission, IR)となるわけではなく、術後の長期フォローアップによって寛解に至る遅延寛解(delayed remission, DR)が一定数にみられる。

北京協和医学院の研究チームは、クッシング病患者における術後DRを予測するための機械学習モデルの開発を行った。Journal of Clinical Endocrinology & Metabolismで1日、オンライン公開されたチームの研究論文によると、当該アルゴリズムは201人のクッシング病患者データベースによって導かれたという。201人のうち43.8%にあたる88人がDRの基準を満たしていたが、「若年・低BMI・Knospグレード(下垂体腺腫の摘出度予測スケール)で3から4」といった特性を持つ場合にDR率が低くなっていた。RFEによって特徴量選択を行ったのち、18の特徴量を含むAdaboostモデルがDR予測において最大の識別能を示していた。また、この識別精度はKnospグレードと術後血清コルチゾール値を使用する場合よりも有意に優れていることが確認された。

本研究は、機械学習ベースの術後DR予測モデルが非侵襲的な評価アプローチとして機能する可能性を示しており、クッシング病患者の個別治療やフォローアップ戦略の策定において役立つことが期待される。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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