医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例交通外傷の「防ぎえた死亡」の分析を補助するAI - 米国外科医学会臨床会議 2020

交通外傷の「防ぎえた死亡」の分析を補助するAI – 米国外科医学会臨床会議 2020

「Preventable Death」は患者の死因を分析した結果、治療介入次第では「防ぐ事ができたかもしれない死亡」を示し、救急医学領域でも頻出の概念である。防ぎえた死亡を検討するために、「診療記録から病院到着前の治療内容を自然言語処理で抽出するアルゴリズム」が、米国外科医学会臨床会議2020で発表されている(抄録集参照)。

同学会のプレスリリースによると、ミネソタ大学の研究者らが発表したアルゴリズムは、ミネソタ州の救急医療サービス(EMS)で搬送された自動車事故患者22,529名の診療記録を読み取り治療内容を抽出した。同研究の分析結果として、気道確保を要する患者で病院到着前に処置を受けたのは約4分の1(936名のうち242名)、骨髄穿刺で急速輸液するintraosseous accessが必要な患者では約3分の2(170名のうち110名)が処置を受けるにとどまることなどを明らかにした。同アルゴリズムは、2人の外傷外科医が手動でレビューした結果と比較され、80%以上の精度と再現性が達成されたという。

救急隊員らによって電子カルテに記録された内容は、適切な治療を受けられていたか後ほど精査されることになる。その検証過程は多大な労力を要するため、現場からは作業の自動化が待望されていた。同研究を率いたSwann博士は「医師の手を完全に離れて判断できる精度ではありませんが、従来の手動の精査過程を合理化するには十分なパフォーマンスを発揮できているでしょう」と語っている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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