COVID-19患者の血小板数や白血球数にみられる特徴的な変化には多くの研究結果が注目してきた。その中の成果の1つとして、SARS-CoV-2に感染している患者を、標準的な血液検査の全血球数(CBC: complete blood count)から予測するAI手法が発表されている。
英国リンカーン大のニュースリリースでは、同大学のVorselaars博士を含むチームが発表した「機械学習とAIによる全血球数からのSARS-CoV-2感染予測」を紹介している。学術誌 International Immunopharmacologyに掲載された同研究は、サンパウロのCOVID-19患者データから全血球数を解析するAIモデルを構築し、病棟患者での予測精度はAUCで94-95%、市中の一般市民ではAUC 80-86%を達成した。研究ではライノ・アデノ・インフルエンザなど別のウイルス感染による血球数パラメータと、SARS-CoV-2による特徴的な免疫応答による血球数が、AI手法で区別される可能性が示されている。
COVID-19の看過できない重症移行度や死亡率のため、かぜ症候群やインフルエンザなど他のウイルス感染との鑑別が喫緊の課題とされている。国や地域による貧富差、および医療資源の分布特性から、今後もPCR検査の実施には一定の限界と制約があることは想定される。高度な機器や医療リソースを必要としないスクリーニング手法のひとつとして、全血球数による感染予測は課題解決の方向性を表している。