医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例ウェアラブル技術で飲水を促し尿路結石予防

ウェアラブル技術で飲水を促し尿路結石予防

尿路結石は、激烈な痛みだけでなく、腎機能障害や尿路感染の原因にもなり、再発率の高さが課題となる。国内外のガイドラインでは「1日の尿量が2000-2500ml以上となる水分摂取」が結石の再発予防に対して推奨されている。しかし、その推奨に対して飲水目標の達成は難しく、遵守できる患者の割合は50%を下回るという。尿路結石を予防するため、飲水行動を促すウェアラブル技術が注目されている。

ペンシルバニア州立大学のニュースリリースでは、同大の研究チームが開発する飲水行動促進のウェアラブル技術「sipIT」が助成金約300万ドルを受け取ったことを報じている。sipITはスマートウォッチ Fitbitにインストールされ、無線接続されるインテリジェント水筒のH2O-Palと連動して、飲水量を追跡することで目標の飲水量達成を促す。患者がリマインダーを煩わしく感じない時間帯などアルゴリズムが工夫され、一定期間利用した後は、ツールなしでも水分摂取の習慣が継続されることを目指している。

同プロジェクトは、米国泌尿器科学会 American Urological Association(AUA)の2020年次総会でベストポスター賞を受賞して評判を高めた。今回の助成金提供を受け、大規模臨床試験に向けた技術改良が進められている。尿路結石のみならず、尿路感染症や術後再入院の予防など脱水症に関連するリスク管理への応用も期待される。積極的な飲水を促すシンプルな介入でありながら、その行動変容から生み出される健康上のメリットには大きな可能性を感じさせる。今後の展開が楽しみなプロジェクトである。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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