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網膜から心血管疾患発症を予測するAIシステム

シンガポール・香港・韓国・オーストラリア・米国などからなる国際研究チームは、網膜画像から心血管疾患(CVD)発症リスクを推定するAIシステムを開発した。研究成果は今週、Nature Biomedical Engineeringから公開されている。

チームの研究論文によると、70,000を超える画像を含む多国横断的多民族データベースを利用し、網膜画像における網膜血管径の自動測定を実現する深層学習モデルの開発と検証を行ったという。専門家による血管径測定との比較において、同モデルは級内相関係数で0.82-0.95と高い一致率をみた。また、この深層学習モデルでは、血圧・BMI・総コレステロール・HbA1cといったCVDリスク因子との関連についても高いパフォーマンスを示しており、モデルで測定した網膜血管径からCVD発症を予測できる可能性が示唆された。実際に施行された前向き研究においては、本システムによるベースライン測定は、CVD発症を有意に予測することが確認されている。

研究チームは今後、臨床利用を前提とした「CVD予測のための説明可能な深層学習システム」の開発を目指す。なお、主要な研究データは論文中のsupplementary informationから、個人情報を含む情報を除き参照することができる。一方で、実際に利用されたカスタムコードは特許申請中につき、現在は閲覧できない。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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