医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例日常臨床の記録から自傷行為を予測するAI

日常臨床の記録から自傷行為を予測するAI

米国自殺予防財団(American Foundation for Suicide Prevention)調べによると、自殺は米国の死因の第10位で、2018年には年間140万件以上の自殺企図が記録されたという。自殺企図を予測する機械学習による取り組みは以前にも紹介した(過去記事)。日常の臨床記録から自傷行為リスクを予測するAIアルゴリズム研究が、サウスカロライナ医科大学の研究者らによって学術誌 JMIR Medical Informaticsに報告されている。

News-Medical.Netでは同研究を紹介している。この研究では電子カルテ内のテキストデータを解析し、「故意の自傷」の国際疾病分類(ICD)コードを持つ患者と、コードを持たない対照群とでトレーニングして、アルゴリズムを構築した。訓練されたモデルの予測精度を検証したところ、AUCは0.882の性能を示した。メンタルヘルスと無関係の症状で受診している患者のデータを含めることは、アルゴリズムにとって多くのノイズを含む。そういったなかでも、このモデルは過去の報告と比較して十分な予測精度に達していると、著者らは主張する。

同研究は日常の臨床記録のみに基づいて自傷行為リスクの高い患者を特定する、ディープラーニングモデルの実現可能性を示している。研究チームは、自傷行為以外に自殺・希死念慮についても予測モデルを検討予定であり、他施設でも一般化できるモデルとなるようにさらなる研究を進めていく。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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