ライム病は野生動物からダニを媒介として病原体ボレリアに感染する人獣共通感染症である。好発地域の米国では、年間3万人以上もの新規ライム病患者が発生しているとの統計もある。特に感染後期の皮膚・神経・関節症状に進展したときの治療の難しさから、感染初期の皮膚症状をスクリーニングし早期治療に結びつけるのが効果的となる。ディープラーニングに基づき、疾患に典型的な遊走性紅斑(erythema migrants: EM)といった皮膚症状を画像から正確に診断する方法が模索されている。
米ジョンズホプキンス大学ライム病研究センターからのリリースでは、同大で開発された「ライム病のEM所見を他の皮膚疾患と比較し検出するディープラーニングモデル」が紹介されている。成果は学術誌 Computers in Biology and Medicineに掲載された。同モデルは、ジョンズホプキンス大とライム病バイオバンクから提供された臨床画像以外にも、オンラインで一般公開されている皮膚画像がアルゴリズムの訓練に使用された。システムは、他の虫刺されや皮膚疾患との判別で71.58%の精度、正常皮膚との判別で精度94.23%、感染患者の臨床画像で感度88.55%を達成している。
ライム病のEM所見には、古典的な教えで、リング状病変が重なるいわゆる「ring-with-in-a-ringまたはbull’s eye」パターンへの過度な思い込みと固定観念に注意が必要で、その出現患者は20%程度に過ぎないとの報告もある。同研究はEM所見の複雑性・多様性をディープラーニングモデルが的確に識別する可能性を示した。また、同研究ではスマートフォンなどで撮影されオンラインに「野良で(in the wild)」存在する画像を含めてモデルを訓練した点もユニークである。ライム病後期の重篤な長期合併症に発展してしまう前に、初期の患者での見逃しを防ぐ技術応用が期待される。