世界的に聴覚士(Audiologist: 日本では言語聴覚士が扱う聴覚障害分野)の専門知識を必要とする難聴者の割合は増加傾向にある。聴覚ケアサービスにおける需給バランスのひっ迫が想定されるなかで、難聴の診断・トリアージプロセスは再構築を求められている。米ボストンの専門病院Massachusetts Eye & Earの研究者らは「難聴の種類を聴力検査であるオージオグラムの画像データから自動分類するAI」を発表している。
学術誌 The Hearing Journalに収載された研究では、カナダのトロント大から助成を受け、同地域にあるサニーブルック保健科学センターで集められた1,007枚のオージオグラム画像からディープラーニングアルゴリズムを構築し検証した。アルゴリズムは正常および伝音・感音・混合性難聴の分類で97.0%という識別精度を達成している。
このような難聴の自動分類AIは、聴覚士のようなリソースが潤沢な恵まれた環境にいる者にとっては限定的な手法に見られるかもしれない。しかし、世界に存在する聴覚ケアを十分に受けられない地域にとっては医学的課題への主要な解決策ともなり得る。同研究が発展し、それらの地域にオージオグラムを記録するスマートフォンやコンピュータさえ展開できれば、医療システムをも変革する可能性を秘めていると研究グループは期待している。