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出生前情報からAIで新生児薬物離脱症候群を予測

米テネシー州ナッシュビルに本拠を置くヴァンダービルト大学の研究チームは、出生前の曝露情報から新生児薬物離脱症候群(NAS)の発症を予測する機械学習モデルを開発した。妊婦による薬物・嗜好品の摂取はその一部が胎盤を通過するため、出生後の新生児に薬物離脱に伴う禁断症状を誘発することがあり、これをNASと呼ぶ。米国ではオピオイド乱用が広範にみられるため、オピオイド曝露に伴うNASが社会問題となってきた。

The Journal of Pediatricsに掲載されたチームの研究論文によると、計21万にも及ぶ妊婦とその出生児記録から同アルゴリズムの構築を行ったという。データセットのうち、実際にNASを発症した新生児も3,000を超える。研究チームは、妊婦基本属性のほか、出産前30日間における薬物や嗜好品などの曝露共変量からNAS発症を予測する機械学習モデルを導出した。生成した2種のモデルはいずれもAUCで0.89と十分に高い識別精度を示し、著者らは特に低リスク新生児の検出効果を強調している。

米国小児科学会(AAP)の推奨では、オピオイド曝露が考えられる新生児はNAS発症を監視するため、通常より3-4日程度入院期間が延長される。この標準的アプローチは入院に伴うコストの増加と初期の母子間コミュニケーションの過度な短縮、適切なリスク層別を伴わない非効率などが問題視されてきた。研究チームによる新しいリスク評価モデルは、周産期医療の質的向上と、新生児管理の効率化を通した医療費の適正化に資することが期待されている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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