AIでオピオイド使用障害を早期発見

オピオイドへの依存・乱用を示す「オピオイド使用障害(OUD)」は、世界1600万人の罹患が推定されている。OUDはその疾患特性・社会背景から診断の遅れと見逃しが問題となってきた。イスラエル・アリエル大学の研究チームは、OUDの早期診断を実現する機械学習アルゴリズムの構築を目指している。

Pharmacology Research & Perspectivesに16日掲載されたチームの研究論文によると、2006年から2018年までにレセプトデータベースに収集された55万人の患者記録から、1000万件もの医療保険請求データを分析することで本アルゴリズムを導いたという。436の予測因子候補を、患者属性・全身状態・診断・投薬・医療費・エピソードなど6つの機能グループに分類した上で、Word2VecとGradient Boostingtreesによるモデル構築を行った。得られた最良のモデルではc統計量として0.959、感度0.85、特異度0.882を示していた。

チームは本アルゴリズムの利用によって「OUD診断までの期間を平均で14.4ヶ月短縮できること、罹患率・死亡率を低減する可能性と、これらを通した医療費削減効果」を強調している。2003年から2013年までの10年間においても、米国ではOUD患者が50%増加するなど急速な事態悪化をみており、本ツールが有効な技術的対策の一つとなるか注目が集まっている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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