血液は本来無菌であるが、ここに細菌を認める状態を菌血症と呼ぶ。免疫系による排除を免れた細菌は全身各所への蓄積を起こし得るほか、時に全身性の重篤な病態である敗血症を引き起こすことがある。アイルランド・ダブリンに所在するロタンダ病院の研究チームは、簡便な血液検査項目である全血球計算(血算)から妊産婦の菌血症リスクを推定する機械学習アルゴリズムを構築した。
21日、International Journal of Laboratory Hematologyに掲載されたチームの研究論文によると、血中細菌が陽性であった129名の女性と、3,830名のコントロール(血中細菌陰性)からこのアルゴリズムを導いたという。興味深い成果としては、好中球/リンパ球比(NLR)が菌血症を「解釈可能な指標として単独で妥当に」予測していることがある。菌血症の有病率が3%である場合、「NLRが20を超えていること」は特異度94.1%、感度27.9%、陰性的中率97.4%で菌血症を識別しており、NLR単独であっても日常臨床での利用余地が期待できるとしている。
一般血液検査項目から種々の疾患予測、リスク推定を行うことは医療AI領域における2020年のホットトピックのひとつとなっている。新型コロナウイルス感染症の拡大が深刻さを増すなか、限りある医療リソースを効率的に活用するための技術利用は、ヘルスケアにおけるあらゆるシーンで強く求められている。