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マウントサイナイ医科大学 – アルツハイマー病の3つの分子サブタイプを特定

米ニューヨーク市マンハッタンに所在するマウントサイナイ医科大学の研究チームは、アルツハイマー病における3つの分子サブタイプを特定した。これは個別化された治療法開発に向けた新しい道を切り開く可能性があることから、研究成果は現在大きな注目を集めている。チームの論文は先週、Science Advancesから公開された。

マウントサイナイ医科大学によるプレスリリースによると、アルツハイマー病患者および非アルツハイマー病患者であった数百名の死亡献体から、5つの脳領域1,500を超えるサンプルを取得し、RNAシーケンスデータを解析することでこの成果を導いたという。特定された3つのサブタイプは年齢や病期とは完全に無関係で、脳の変性につながる生物学的機序に連動する。興味深いことに、アルツハイマー病の神経病理的学的特徴とされるタウ蛋白による神経原繊維変化やアミロイドβプラークは、特定のサブタイプのみで有意に増加するものであった。

近年多くの研究で、アルツハイマー病の原因として免疫反応の存在が示唆されている。一方で、アルツハイマー病の半数以上において正常脳と比較して「免疫反応の上昇を認めない」事実もあり、これはアルツハイマー病進行における特定サブタイプ固有の分子ドライバーの存在によって説明されようとしている。研究者らは「アルツハイマー病の分子サブタイプの特性評価によって、調節不全となっている多くの新しいシグナル伝達経路が明らかになるため、新しい治療ターゲットが見出されていく」ことを強調する。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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