医師のAI使用の責任はいつどこで増大するのか?

Human and robot hand connecting

これまでの研究において、一般の人々の間で「AIが医療の意思決定に関わることへの懸念」がまだまだ根強いことが示されてきた。しかし、新しい研究では「AIの勧告に従った医療者は医療過誤の際に責任が少ない」と陪審員が認識する可能性が示唆されている。

学術誌 Journal of Nuclear Medicineに発表された「医師のAI使用の責任」に関する新しい研究では、米国の成人2,000名を対象にAIアルゴリズムが医師に卵巣がん治療薬の投与量を推奨したシナリオを読ませ、そこでおきた医療過誤の責任を評価させた。AIが「標準」か「非標準」の薬剤投与量を推奨した場合と、医師がAIの推奨を「受け入れた」か「拒否した」場合でシナリオは4パターンに変化するが、そのすべてで医療過誤が起きてしまう。結果、「標準的AI勧告を受け入れた医師」の方が「標準的AI勧告を拒否した医師」よりも好意的に判断された。さらに「非標準的AI勧告を受け入れた医師」はそれを拒否した方が安全であったとは判断されない傾向が示された。

研究チームは結果を受け、AIの勧告を受け入れた医師に対する法的責任の脅威は、従来考えられていたよりも小さくなってきた可能性があるとする。そして、それら障壁が低くなることでAIの医療利用が増え得ることに言及している。

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TOKYO analytica
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。
The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. M.Okamoto MD, MPH, MSc, PhD
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. T.Sugino MD
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。