重症の大動脈弁狭窄症は症状発現後から急速に増悪する進行性疾患であるが、従来は外科的人工弁置換術が唯一の延命治療とされてきた。近年、外科的手術と同等の効果を示す治療方法として「経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)」が提唱され、2013年からは日本でも保険収載されている。低侵襲治療としても施行件数は増加をみているが、人工弁移植後に起こし得る伝導障害のため、一定割合に恒久的ペースメーカー植込み(PPI)が必要となることが問題となってきた。
Pacing and Clinical Electrophysiologyから12日公表された研究論文によると、TAVR後のPPIを予測する機械学習アルゴリズムは、557名の大動脈弁狭窄症患者データセットから構築されたという。平均年齢80歳の同群においてTAVR後のPPIは95名、17.1%に確認された。ベースラインの患者属性や術前術後の心電図記録、心エコーデータなどからランダムフォレストモデルをトレーニングしたところ、AUC 0.81と、ロジスティック回帰モデルの0.69を大きく上回る良好なパフォーマンスを示していた。
著者らは、機械学習モデルが従前の統計モデルより優れたPPI予測精度を示すことを強調するとともに、TAVRに伴う重要な合併症リスクを事前予測することによって、より個別化された治療・管理戦略の策定につながることに言及している。