精神疾患である気分障害は、うつ病(大うつ病性障害)と双極性障害を2つの主要な類型としており、世界人口の約3.9%が影響を受けているとの推計がある。双極性障害は躁病とうつ病を繰り返すが、うつ病エピソードの間に医療の助けを求める可能性が高いため、躁病の状態が未診断となり、疾患の区別がつけられず診断の遅れと治療の方向性を誤り得ることが問題であった。
「問診と血液バイオマーカーから機械学習アルゴリズムによってうつ病と双極性障害の2つの疾患を鑑別する研究」がケンブリッジ神経精神医学研究センターで実施され、学術誌 Translational Psychiatryに発表されている。同研究にはうつ病と診断されたことがある双極性障害患者126名と、うつ病患者187名から、オンライン問診表(WHO WMH-CIDI または CIDI)と血中バイオマーカー(タンパク質120種からのペプチド203種)が解析された。それらのデータから機械学習手法のエクストリーム勾配ブースティング(XGBoost: Extreme Gradient Boosting)によって診断アルゴリズムが構築され、2つの疾患群を鑑別する精度はAUC 0.92となった。さらに気分障害と診断されたことのない被験者による追加検証では、うつ病と双極性障害の鑑別はAUC 0.89を達成した。
2つの疾患の鑑別に重要な役割を果たした予測因子の上位30項目には、26項目がオンライン問診表、4項目が血中バイオマーカーであった。問診による症状とバイオマーカーを組み合わせた診断アルゴリズムの実証として同研究は大変ユニークである。研究グループによると、この概念実証研究がより一般化され、双極性障害患者がうつ病と誤解されず迅速で正確な診断につながるよう、臨床現場での応用が進むことを期待している。