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外科手術後の重篤な合併症を予測するウェブベースのAIツール

米ペンシルベニア州フィラデルフィアに本拠を置くトーマス・ジェファーソン大学の研究チームは、外科手術後の脳卒中や腎不全といった重篤な合併症の発現を予測するAIモデルを開発した。各リスク予測モデルは現在、ウェブベースのツールとして無償公開されている。

トーマス・ジェファーソン大学が先週明らかにしたところによると、研究を率いたSang Woo准教授らは、220万人を超える外科患者の臨床データベースを分析し、重篤な合併症に至るリスク因子を検討した。ここから導いた8つの予測因子を用い、140万人を超える患者データから機械学習モデルのトレーニングを行い、どの患者が腎不全を発症し得るかを正確に予測することに成功したという。また、同様にして術後患者の脳卒中や心血管疾患、死亡といった深刻なイベントのリスク予測モデルも構築しており、脳卒中でAUC 0.87、死亡で0.92という高い識別精度を示していた。

これらモデルはウェブベースのツールとして提供されており、医師らによる術前評価の一種としてベッドサイド利用の進むことが期待されている。Woo准教授は「今回の成果によって深刻な合併症の発症を客観的、かつ正確に評価するツールを開発することができた。次はこれらリスクを効果的に低減するための方法を調査していきたい」としている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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