医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例疾患予防へのAI活用事例網膜眼底画像によるパーキンソン病スクリーニング

網膜眼底画像によるパーキンソン病スクリーニング

パーキンソン病は、脳黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの進行性喪失により、運動制御が次第に困難となる。パーキンソン病に関連した死亡は2000年以降2倍以上に増加しており、その主要な原因は高齢者における「適時での質の高い介入」の欠如が挙げられている。

このほどScientific Reportsから公開された研究論文では、ディープラーニングにより、網膜眼底画像からパーキンソン病をスクリーニングできる可能性を指摘している。パーキンソン病に対する網膜バイオマーカーを深く理解するためには、網膜血管系の構造的変性に関する十分な知識が必要となる。これを臨床的に実施することはしばしば困難であるが、AIは網膜の局所的および大域的な空間レベルでの複雑な関係の解明に役立つ可能性がある。本研究は、前述の課題に対処するためにAIアルゴリズムの使用を提案するもので、「眼底画像からPDを診断するための最初の大規模AI研究の1つである」としている。

特徴選択法や外部の定量的尺度を一切無視することで、研究者らはAIアルゴリズムの診断能力を最大化した。ディープニューラルネットワークは、従来の機械学習モデルを凌駕し、網膜眼底画像におけるパーキンソン病の検出において顕著な性能を示した。このモデルは、0年から5.07年までの間、80%の感度で正式診断前のパーキンソン病発症率を予測することに成功した。また、5.07年から5.57年の間に感度は93.33%まで上昇し、5.57年から7.38年の間に81.67%まで低下した。これらの結果は、早期疾患介入の可能性を示すものとして有望と言える。チームでは、実臨床現場におけるAIモデルの信頼性を確立するため、多様なサンプルを用いた追加研究を模索している。

参照論文:

Deep learning predicts prevalent and incident Parkinson’s disease from UK Biobank fundus imaging

関連記事:

  1. ウェブカメラとAIによる「パーキンソン病の家庭評価」
  2. 眼球スキャンでパーキンソン病の兆候を7年前に検出
  3. スマートウォッチでパーキンソン病リスクを最大7年前に特定
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事