2024年の米国における医療AI事情

米国の医療機器規制当局にあたる米食品医薬品局(FDA)は、既に692のAI製品を承認している。アルゴリズムは、患者のスケジューリングや緊急治療室における人員配置の決定、医師の時間節約に資する臨床診察の書き起こしや要約、また、放射線科医が種々の画像を読影することにも役立っている。

同領域に関する米国での投資もその規模を大きく維持している。ベンチャーキャピタルのRock Healthによると、金融機関は「AIを専門とするデジタルヘルス企業」に280億ドル近くを投資しているという。一方で、規制当局が頭を悩ませている問題の1つは、5年後も現在と同じ化学的性質を持つ医薬品とは異なり、「AIは時間とともに変化すること」にある。ホワイトハウスや複数の有力医療機関群が中心となり、透明性とプライバシーを確保するための規則を策定するなど、ガバナンスは形成されつつある。議会も医療AIに強い関心を寄せており、上院財政委員会は2月8日、ヘルスケアにおけるAIに関する公聴会を開催した。

規制や法整備に伴い、ロビー活動も活発化している。CNBCは、「2023年にAIのロビー活動を公開する組織数が185%急増した」としている。業界団体のTechNetは、AIの利点を視聴者に伝えるため、テレビ広告の購入を含む2500万ドルのイニシアチブを開始した。2024年も、AIは医療におけるホットトピックの1つであり続ける。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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