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ウェブカメラとAIによる「パーキンソン病の家庭評価」

パーキンソン病(PD)は運動障害を主徴とする神経変性疾患で、指タップ運動(母指-示指をできるだけ速く接触させて離す反復運動)は、PDの運動障害を評価する検査として知られる。米ロチェスター大学の研究チームは、「家庭のウェブカメラを使って指タップ運動などの課題を行い、遠隔環境とAIツールを使ってPDの重症度を評価する研究」に取り組んでいる。

npj Digital Medicineに発表された同研究では、250名の被験者が指タップ運動を実施し、その様子を家庭用ウェブカメラで録画した。医師によるラベル付けを行った後に、動画から診断と評価を行うため、決定木ベースの勾配ブースティングフレームワークであるLightGBMを用いたAIツールを構築した。結果、ウェブカメラの遠隔環境で行った指タップ運動の評価は、院内で行われる試験と同等の性能を示した。また、AIツールによるPD患者の評価誤差(MAE 0.58)は、非専門医の誤差(MAE 0.83)よりも優れており、神経科専門医の誤差(MAE 0.53)に匹敵するレベルであった。

米国では、65歳以上のPD患者のうち約40%が神経科医の治療を受けていないと推定されている。途上国では神経科医の不足がさらに深刻だ。研究チームでは、専門リソースが不足した医療環境で、このようなAIツールの自動評価を利用し、必要時に専門医へPD患者を紹介することで、ツールが社会的に重要な役割を果たすことを期待している。

参照論文:

Using AI to measure Parkinson’s disease severity at home

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