訓練されたイヌの嗅覚が、がんを含む様々なヒトの病気を検出できることが研究で示されてきた。しかし、イヌを診断センサーとして十分な数に増員することは現実的ではない。「機械による嗅覚システムとイヌの嗅覚のもつ能力を統合して前立腺がんの検出を行う研究」がマサチューセッツ工科大学(MIT)などの研究グループによって発表されている。
オープンアクセスの査読付き科学ジャーナル PLOS ONEに発表された同研究では、ガスクロマトグラフィー質量分析で揮発性有機化合物を分析する人工嗅覚システムによって、尿の匂いから前立腺がん患者を検出するシステムが構築された。前立腺がんの特徴を検出する人工ニューラルネットワークの訓練には、訓練を受けた2頭のイヌの嗅覚機能がデータとして用いられている。同研究で用いられた2頭のイヌはグリソンスコア9の前立腺がんを感度71%・特異度70-76%ほどの能力で検出できていた。それらの訓練データから構築されたシステムは結果として、グリソンスコア9の前立腺がんに対してAUC 0.935の識別能力を達成することができた。
MIT Newsでは、同論文の著者のひとりでMITの研究員Andreas Mershin氏のインタビューが掲載されている。同氏によると「小型化された人工嗅覚システムは実際にはイヌの200倍以上の感度をもっているが、その結果の解釈は『間抜け』です。今回の研究ではAI /機械学習によってイヌの嗅覚を模倣することでがんの検出能力をある程度再現できると証明しました」と語っている。
「AIで人間の嗅覚をモデル化」した研究に関しては過去記事を参照いただきたい。