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スマートスピーカーを利用した心拍モニタリングシステム

米ワシントン大学の研究チームは、スマートスピーカーを利用することで、物理的な接触を持つことなく心拍をモニタリングすることのできる機械学習システムを構築した。研究成果はCommunications Biologyから9日、オープンアクセスの原著論文として公開されている。

チームの研究論文によると、スマートスピーカーから部屋に向けて「可聴域にない音波」を発することで、その反射音に基づいた心拍モニタリングを実現したという。スピーカーに心拍を把握させるため、あたらしいビームフォーミングアルゴリズムを構築しており、これが新技術の根幹をなす。興味深いことに、研究チームはアルゴリズムの構築をトレーニングセットから行うのではなく、オンザフライで学習する機械学習アルゴリズムを設計し、スマートスピーカーによる心拍識別を実現させている。当該システムはまた、規則的な心拍と不規則な心拍を適切に識別しており、不整脈の発現を捉えることも支援する。

著者らは「自宅で継続的に施行可能な低コスト検査であり、不整脈への早期の診断・介入を実現させる画期的技術となる可能性がある」点を強調する。今後、技術革新に伴って日常環境下における医学的スクリーニングは当たり前となる可能性が高いが、本システムはデバイスを身につけることさえ不要な非侵襲的かつ簡便な検査手法であり、特に大きな潜在的有用性を孕んでいると言えるだろう。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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