医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例AIを用いた転移性脊椎腫瘍と脊椎圧迫骨折のMRIによる鑑別

AIを用いた転移性脊椎腫瘍と脊椎圧迫骨折のMRIによる鑑別

脊椎圧迫骨折は加齢とともに発症率が高まる比較的一般的な疾患である一方、転移性脊椎腫瘍(MSC:Metastatic Spine Cancer)は治療が遅れると腫瘍が脊髄を圧迫し、両麻痺などの合併症を引き起こし得る重篤な病態である。よって、これらの疾患の区別は重要であるが、MRI画像上による鑑別は困難なことがあり、誤診率は17%にも上る。韓国の研究チームは、脊椎圧迫骨折と転移性脊椎腫瘍をMRIで区別するAIモデルを開発し、Bioengineering掲載した

2019年から2022年までに、胸部MRI検査を受けた248人の患者の画像が、MSC患者135名と転移性病変のない患者(Non-metastasis:NSC)113名に分類された。データセットは、MSC、MSC圧迫骨折、NSC、NSC圧迫骨折の4つで構成され、これらの画像は、大津の二値化法とCannyエッジ検出により前処理された。チームは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルとサポートベクターマシン(SVM)モデルを構築し、評価した結果、T1強調画像において、CNN、SVM両方で高い正解率(0.982/0.971)と感度(1.000/0.978)を示した。また、大津の二値化法とCannyエッジ検出の画像の前処理が、機械学習モデルの予測精度を向上させることも示している。

筆者らは「本研究で開発したモデルは、特にMSCに対して優れた感度を示しており、将来的にMSCの診断に役立てられる可能性がある」と述べている。今後は、多様な画像処理技術やモデルを適応し、より精度の高いモデルの構築や非転移性圧迫骨折を検出することを目指すとしている。

参照論文:
The Classification of Metastatic Spine Cancer and Spinal Compression Fractures by Using CNN and SVM Techniques

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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