医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例医療AIがもたらす影響・問題点「AIの精度差」が放射線科医のパフォーマンスに影響

「AIの精度差」が放射線科医のパフォーマンスに影響

医療AIの性能が放射線科医の診断にどのような影響をもたらすか。この問いに対する1つの答えとして、韓国の医療AIスタートアップ「Lunit」はソウル大学病院との共同研究により、「より高精度のAIモデルが放射線科医の胸部X線読影パフォーマンスを向上させること」を実証している。

Radiologyに掲載された研究では、5-18年の経験を有する放射線科専門医20名と、2-3年の研修を経た放射線科レジデント10名を対象に、Lunitが市販する胸部X線画像解析AIソフトウェア「Lunit INSIGHT CXR」の支援を受け診断を行うよう求めている。その際、同じAIモデルを2種類の異なる精度設定で試験しており、1つはフルバージョンのLunit INSIGHT CXRを「高精度AIモデル」として、もう1つはトレーニングデータを全体の10%に制限したモデルを「低精度AIモデル」として用いた。これら2つのモデルの支援を受けた放射線科医の読影精度を比較することで、AIの精度が診断精度にどの程度影響を及ぼすかを評価した。その結果、高精度モデルではAUC 0.88である一方、低精度モデルではAUC 0.77と有意に医師の診断精度に差が生まれることを示している。

さらに、診断パフォーマンスに影響を及ぼす要因を解析した結果、放射線科医個人の専門知識やAIの使用経験、AIの提案に対する受け入れ度など、個人特性の影響は極めて小さく、「AIモデルの精度差」が診断パフォーマンスの差に独立して関連することが示されている。LunitのCEOであるBrandon Suh氏は、「この研究は医師個人の特性に関わらず、高精度AIの活用が診断精度を大幅に向上させることを裏付けている」と語った

参照論文:

Effect of Human-AI Interaction on Detection of Malignant Lung Nodules on Chest Radiographs

関連記事:

  1. Lunit – 韓国全土の軍隊病院に胸部X線解析AIを提供開始
  2. AIは「胸部X線上の肺結節特定」に貢献する
  3. 日常診療の画像読影パフォーマンスを向上させる骨折検出AI
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事