近年、救急や在宅医療の現場で、肺エコー検査が注目されている。気胸や肺水腫などの診断に肺エコーが有用とされる一方で、質の高い画像を得るには熟練した技術が必要なことが課題であった。この課題に対し、米イェール大学の研究チームは、 AI支援システムを導入することで、非専門医が専門医と同等の精度で肺エコー検査を行えるとの研究結果を発表した。本成果はJAMA Cardiologyに掲載されている。
同研究では、臨床的に肺水腫の存在が疑われる21歳以上の患者176名を対象に、各患者に「非専門医(内科医、看護師、医療助手など)+AI支援システム」と「エコー専門医」がそれぞれ検査を施行し、取得画像の検討を行った。AI支援システムは、画像を自動でセグメンテーションし、Bライン(肺水腫や肺炎などで見られるアーチファクト)を同定する機能を持つ。検査方式を伏せた状態で、各画像が診断に資する描出精度であるかという観点から5名の専門家が評価した結果、非専門医によるエコー画像の98.3%が、専門医による検査と同等の精度であると判定された。非専門医の職種(医師と非医師)によるサブグループ解析においても、描出精度の判定に統計的な有意差は認められず、非医師でも同等の精度で肺エコー検査を行える可能性が示唆された。また、特定の領域(左前胸部)においては、AIガイド下の方がより精度の高い画像を描出することが可能であった。
著者らは、今後の展望について「胸水、浸潤影、胸膜病変を検知するAIアルゴリズムの研究に取り組み、更なる精度向上に努めたい」と述べている。こうしたAI支援システムは、医学教育の現場において活用されることも望まれるだろう。
参照論文:
Artificial Intelligence–Guided Lung Ultrasound by Nonexperts
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