アルツハイマー型認知症などの加齢進行性疾患は、脳の神経細胞の脱落が原因となる疾患である。こうした脳疾患の病態解明には、疾患の最終像となる脳を用いた研究が欠かせない。特に認知症の病態と関係する海馬領域の解析は示唆に富むが、人手と時間を要する現状がある。これに対し、米テキサス大学の研究チームは、剖検脳MRI画像から、海馬およびその亜領域を高い精度で自動判別するディープラーニングモデルを発表した。
神経科学研究の手法を取り扱うNeuroscience Methodsに掲載された同研究では、神経変性疾患患者における15の剖検脳MRI画像(T1強調像・T2強調像・SWI(T2*強調像と類似))を用いて、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデル「DeepAIM」の教師あり学習を行った。DeepAIMは、CNN構造を元にしたU-netにAttention機構を導入したもので、同U-netを用いた4つの先行研究と比較し、海馬、海馬亜領域(歯状回、海馬頭部、海馬体部、海馬尾部)の判定において最も優れた精度を示した。また、SWI画像を含むマルチモーダルなMRI画像を学習に用いることが、高い精度に繋がることも明らかとなった。
研究チームは「従来の病理組織学的手法と組み合わせることで、神経画像研究は未だ発展の余地がある。機械学習などの技術を掛け合わせることで、海馬研究を加速させたい」と述べている。今後は、より大規模なデータへの適用や、モデル構造の改良による学習効率の向上が期待されている。
参照論文:
Convolutional Neural Networks for the segmentation of hippocampal structures in postmortem MRI scans
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