認知機能低下につながる脳の変化は、従来考えられていたよりも早く、中年期には始まっていることが先行研究で示唆されている。米フロリダ大学の研究チームは「電子カルテデータに機械学習手法を用い、アルツハイマー病を臨床診断より早期に予測する」研究を行っている。
Alzheimer’s and Dementiaに発表された同研究では、OneFlorida+ Research Consortiumから、フロリダ州1680万人の電子カルテデータを対象としている。ここから、「アルツハイマー病および関連認知症(ADRD)」と診断された23,835人、および100万人を超える対照患者を特定し、2つの機械学習手法による予測モデル(理論知識型モデルおよびデータ駆動型モデル)を構築・検証した。理論知識型モデルは、既知のリスク因子などに基づき予測を行う。一方、データ駆動型モデルは、電子カルテ内でアルツハイマー病に関係する可能性のある他のデータも柔軟に参照するもの。診断時、診断1年前、3年前、5年前の4つのタイミングで正確性を評価したところ、データ駆動型モデルは、診断時および診断前のいずれにおいても知識駆動型モデルの予測性能を上回り、評価指標であるAUCは診断時点で0.939、1年前で0.906であり、さらに遡るほど性能は低下するものの、3年前で0.884、5年前で0.854という良好な予測性能を達成した。
本研究のデータ駆動型モデルでは、理論知識型モデルでは用いられていないリスク因子を複数特定しており、筋力低下・気分障害・倦怠感・疲労などを挙げている。また、定期健康診断・婦人科検診・乳がん検診など予防医療を受けている女性は、受けていない女性と比べて、アルツハイマー病の発症リスクが低いことも明らかにした。著者のJiang Bian博士は「我々はデータ駆動型モデルで、専門家も認識していないリスク要因を特定できるか試みた。アルツハイマー病の予防には、潜伏期間中の介入開始がより効果的な可能性が高い」と述べている。
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