ミクログリアは中枢神経グリア細胞の1つで、脳の常在免疫細胞としての機能が知られる。Nature Agingから公開されたレター論文によると、このミクログリアがアルツハイマー病の初期に、有害なタンパク質を抑制することで認知機能低下を遅らせる可能性があることを明らかにしている。
スウェーデン・ルンド大学およびカロリンスカ研究所のチームによる報告では、アルツハイマー病の症状はまだ発現していないものの、脳スキャンからタウ蛋白とβアミロイドの蓄積が確認された64人の研究参加者を追跡調査し、疾患初期段階におけるミクログリアの役割を調べている。特に、アルツハイマー関連遺伝子として知られ、中枢神経系ではミクログリアに存在する「TREM2」が高濃度であった患者の脳には数年後、タウ蛋白の蓄積が少なくなり、認知機能の低下も軽度であることを明らかにした。これは、ミクログリア上のTREM2受容体が、疾患初期に損傷した脳細胞の存在を感知すると、タウの蓄積を抑制する働きを示すことを示唆している。
これまで、特にアルツハイマー病の後期においてミクログリアは有害な炎症を助長する可能性が指摘されてきた。一方、本研究成果で示された認知機能低下の抑制効果、およびβアミロイドと比較して、タウ蛋白が疾患進行度を反映する優れた指標であることを考慮すると、今後の治療ターゲットとしてTREM2を介したタウの蓄積抑制も有効な選択肢となる可能性があり、AIアプローチによる認知症治療薬の最適化創薬にも期待が集まる。
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