心エコーAIがソノグラファーを上回る

心エコーによる心機能評価において、「AIによる予備的評価がソノグラファー(超音波検査士と呼ばれる臨床検査技師)による初期評価よりも優れていること」が、ESC Congress 2022のHot Lineセッションで発表された。

左室駆出率(LVEF)の正確な評価は、心血管系疾患の診断や治療方針の決定に不可欠となる。マニュアルでの評価に「検査者間のばらつき」が存在することが指摘されてきた。EchoNet-Dynamicは心エコー向け深層学習アルゴリズムで、平均絶対誤差4.1~6.0%でLVEFを評価することが示されている。特徴となるのは、複数の心周期にわたる情報を使用することで、測定誤差を最小化し、一貫した結果を得ることができるという点だ。27日に公表された研究では、AIとソノグラファーによるLVEF評価のどちらが、その後「心臓専門医による修正・調整をより頻繁に受けるか」について、無作為化比較試験によって検証している。結果、3,495件の経胸壁心エコーを対象とした検証により、ソノグラファー群では27.2%が調整を受けたのに対し、AI群では16.8%とその割合が有意に低下していた。

研究を主導したOuyang氏は「AIアルゴリズムの優れた性能と、臨床ソフトウェアへのシームレスな統合ができる可能性」を指摘しており、「AIアルゴリズムが適切な方法で開発・統合されれば、エコー読影の出力品質を向上させるだけでなく、『手間はかかるものの重要な作業』を簡略化し、ソノグラファーや心臓専門医が費やす時間と労力の効率性を高めることに非常に有効だ」とコメントしている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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