急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は敗血症や肺炎など多様な疾患を原因として、血管透過性亢進のために肺に液体が貯留し、血中酸素レベルが高度に低下するもの。死亡率は40%を超えるともされ、患者予後の改善のためには早期の治療介入が欠かせない。オーストリア・ウィーン医科大学の研究チームは、多発外傷で入院した患者の初期CT画像からARDS発症を予測する機械学習モデルの開発を行っている。
European Radiologyから17日公開されたチームの研究論文によると、外傷重症度スコア(ISS)が16以上の123名の患者データからモデル構築を行ったという。受傷後1時間以内に撮影されたCT画像を用い、ディープラーニングベースのアルゴリズムによって、エアポケットや胸水を含むエリアを自動的にセグメント化した。その後、ラジオミクスの特徴抽出を行い、勾配ブースティング決定木をトレーニングしてARDS予測モデルを導いた。結果、AUCは0.79となり、ISSの0.66を大きく上回る識別精度を示していた。
本研究が興味深いのは、実臨床に沿ったより現実的なスキャンプロトコルにも関わらず、導出されたモデルでは従前のスコアを精度として有意に改善する点である。多発外傷におけるCT撮影は一般的であるため、初期画像からARDSリスクを明らかにすることは治療管理計画の策定に大きく資する可能性がある。