骨髄異形成症候群(MDS: Myelodysplastic syndrome)は、血液のがんとして骨髄機能の異常から造血に障害を来し、前白血病状態で知られる疾患群である。MDS疑い患者の骨髄を採取し塗抹標本から診断へと進むが、その形態異常の確認とグループ分類には検査を行う者の主観が影響するため、深層学習モデルの助けが期待されている分野のひとつである。
フィンランドのヘルシンキ大学では、患者の骨髄サンプルに対し、ルーチンのHE染色のもとで顕微鏡画像を解析する深層学習モデルが構築された。同大のリリースでは、米国癌学会(AACR)の学術誌 Blood Cancer Discoveryに発表された論文が紹介されている。その結果、MDSにおいて骨髄サンプルの形態観察から各種の遺伝子異常を識別する精度として、TET2遺伝子異常のAUCで0.94、スプライシング関連遺伝子変異で0.89、7番染色体モノソミーで0.89、などが達成された。
同研究では、深層学習モデルが「骨髄サンプル内で人間の目には識別が困難な特徴」を見出しており、骨髄細胞と周辺組織に及ぼす影響について新たな知見が得られている。研究グループのSatu Mustjok教授は「今回の研究成果は、MDS患者の骨髄細胞変化や予後との関連性を定量化するデータ収集にも役立つでしょう」と述べている。