遠隔医療を助ける新しい自律型ドローン

米国におけるケアアクセスの問題は依然深刻で、4人に1人は定期的な医療サービスを受けるためのかかりつけ医や保健センター等の窓口を持たない。健康増進と疾病予防のためには「日常的な医療アクセスを増やす」ことが欠かせないが、COVID-19の拡大はこのことへの重大な阻害因子ともなっている。こういったなか、遠隔医療の重要性が急速に増しているが(過去記事)、米シンシナティ大学の研究チームは遠隔医療向けのドローンを開発し、その有効性を検証している。

シンシナティ大学が明らかにしたところによると、研究チームが開発したドローンは半自律型駆動で、医薬品の運搬を可能としながら屋内移動に問題のない小ささを確保しているという。このドローンにはカメラとディスプレイが備わり、患者は自宅にいながら医療者とディスプレイ越しのコミュニケーションを取ることができる。現在のプロトタイプは医薬品の運搬とともに、血液などの生体試料を適切に運ぶための防水ボックスなどが搭載されている。

開発を主導するKumar教授は「ほとんどのドローンは無線通信で動作するコントローラーに依存しており、安全なリモート操作のためには見通し線が必要になる。一方、見通し外での制御にはやはり自律機能が欠かせない」とする。研究チームは、AIと一連のセンサーを組み合わせた自律システム開発に取り組んでおり、居間の入り口など屋内の雑然とした3次元環境をナビゲートすることができるようになった。今後、ドローンは遠隔医療の重要なファクターとなる可能性が高く、関連する技術開発への期待も大きい。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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