米国におけるケアアクセスの問題は依然深刻で、4人に1人は定期的な医療サービスを受けるためのかかりつけ医や保健センター等の窓口を持たない。健康増進と疾病予防のためには「日常的な医療アクセスを増やす」ことが欠かせないが、COVID-19の拡大はこのことへの重大な阻害因子ともなっている。こういったなか、遠隔医療の重要性が急速に増しているが(過去記事)、米シンシナティ大学の研究チームは遠隔医療向けのドローンを開発し、その有効性を検証している。
シンシナティ大学が明らかにしたところによると、研究チームが開発したドローンは半自律型駆動で、医薬品の運搬を可能としながら屋内移動に問題のない小ささを確保しているという。このドローンにはカメラとディスプレイが備わり、患者は自宅にいながら医療者とディスプレイ越しのコミュニケーションを取ることができる。現在のプロトタイプは医薬品の運搬とともに、血液などの生体試料を適切に運ぶための防水ボックスなどが搭載されている。
開発を主導するKumar教授は「ほとんどのドローンは無線通信で動作するコントローラーに依存しており、安全なリモート操作のためには見通し線が必要になる。一方、見通し外での制御にはやはり自律機能が欠かせない」とする。研究チームは、AIと一連のセンサーを組み合わせた自律システム開発に取り組んでおり、居間の入り口など屋内の雑然とした3次元環境をナビゲートすることができるようになった。今後、ドローンは遠隔医療の重要なファクターとなる可能性が高く、関連する技術開発への期待も大きい。