疼痛の評価には現在、人種や文化のバイアスが介入しやすい「主観的な方法」が主流となっており、評価のばらつきとともに、頻回な評価による負担などが課題となっている。米カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは、手術患者の表情から痛みを自動評価するAI技術を開発している。
ANESTHESIOLOGY 2023年次総会で発表された同研究では、外科手術前後の患者69人を対象に、115件の疼痛時エピソードおよび159件の非疼痛時エピソードから143,293枚の顔画像を収集し、痛みを感じているかどうかを自動分類するAIモデルを構築した。AIモデルが顔面のどの部位に注目して疼痛パターンを識別しているか、ヒートマップを用いて解析したところ、特に「眉」「唇」「鼻」の表情と表情筋を重要な指標として捉えていることが分かった。同モデルは、従来の疼痛評価手法である「Critical-Care Pain Observation Tool(CPOT)」と88%、「Visual Analog Scale(VAS)」とは66%の一致をみた。
筆頭著者のTimothy Heintz氏は、「この技術を、患者ケアの質を向上させる新たなツールとできるかもしれない。例えば、手術後の回復室の壁や天井にカメラを設置し、1秒間に15枚の画像を撮影することで、患者に意識がなくても痛みを自動評価できる。これにより、痛みの評価に断続的に時間を割かれる看護師ら医療従事者は他のケアに専念できるだろう」と語った。
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