がんナビゲーターを支援するAIモデル

近年、米国を中心に普及を見せる「がんナビゲーション」と、特別なトレーニングを受けてこの実務を担当する「がんナビゲーター」の存在をご存知だろうか。がんナビゲーターは、がん患者とその家族に寄り添い、専門性の高い情報を分かりやすく適切に伝え、様々な相談に乗る身近な存在となる。

日本でも一部に認定制度が始まるなど、がんナビゲーターの活躍に期待が集まる。一方で、がんは一般的に病状やそれに伴う問題が深刻であることが多く、がんナビゲーターはケアプロセスを通じて多大な心的ストレスを伴うことが明らかになっている。米OSF HealthCareの研究者らは、AIを用いた予測モデルにより、がんナビゲーターのワークフローを緩和することで燃え尽き症候群を予防する可能性を示した

このAIベースのソリューションは、患者の電子カルテ記録に基づき、「がんナビゲーターが既存患者と新規患者について稼動する必要のある時期を予測する」もので、ナビゲーター間での仕事量の差を抑えるため、二次的なモデルによって特定の専門分野のナビゲーターに新患を割り当てることを支援する。研究チームは、このソリューションの有効性を確認するため、ランダムな割り当てプロセスと比較したところ、AIモデルによる割り当ての方が、作業負荷の公平性が高いことが確認されている。

OSFのイノベーション担当シニアフェローであるJonathan Handler医師は、「がんナビゲーターは非常に献身的であり、その仕事量は時に圧倒されるほどのものだ。彼らは決して患者を軽んじず、患者を助けるために余分な時間を働き、自分自身の幸福を犠牲にしている。我々のシステムによって、そのような仕事量を均等化し、彼らのワークライフバランスを改善できることを願っている」と述べた

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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