医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例乳がん超音波検査でAIの可能性を示す新研究

乳がん超音波検査でAIの可能性を示す新研究

乳がんの診断において、X線画像のマンモグラフィを補完する検査として、超音波検査の有効性が検討されてきた。AIツールによる乳がん超音波診断の可能性も拓かれてきたなかで、良性・悪性の診断からさらに踏み込み、炎症性腫瘤と腺腫を含めた4つのカテゴリに分類するアルゴリズムが研究されている。

学術誌 Chinese Medical Journalには、北京天坛医院などによる多施設共同研究として「ディープラーニングを超音波画像に適用し乳腺腫瘍の診断精度を向上させた」とする成果が発表されている。13施設、3623人から収集された乳腺腫瘍の超音波画像15,648枚から、良性・悪性・炎症性・腺腫の4カテゴリに分類する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が開発され、それぞれのAUCは0.90・0.91・0.90・0.89を達成した。

同研究において1cmを境界とした腫瘍の大きさによる分類性能は、良性腫瘍の分類には影響したが、悪性腫瘍の検出精度には影響しなかったことが示されている。また、超音波専門医の読影と比較した際には、精度と処理時間に大きな差があり、CNNモデルで精度89.2%・処理時間2秒以下、専門医らの平均で精度30%・処理時間314秒であった。同研究からはCNNを乳腺腫瘍の超音波画像に適用することで、専門医の診断を補強する大きな可能性が示されている。

関連記事:

  1. 米Koios 乳房超音波のAI診断システムでFDA承認を取得
  2. 乳がん診断のgame changerとなるか – AIによる超音波エラストグラフィの解析
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事