転倒の際に手首に起きやすい骨折のひとつとして舟状骨骨折がある。X線による骨折の診断が一般的だが、舟状骨のように小さな骨は骨折線が認識しにくく、初期のX線で診断できない例が20%程度あるとされる。X線で診断できない例にはMRIをはじめとした精密検査を要したり、診断の遅れが痛み・関節炎による生活への悪影響、また骨の癒合不良による偽関節などを引き起こす。
JAMA Network Openに発表された研究では、ミシガン大学と台湾のAI医療センターのグループが、「舟状骨骨折をX線で診断する深層畳み込みニューラルネットワーク(DCNN)」を開発している。そのアルゴリズムは2段階のDCNNによって構成されるが、1段階目では舟状骨骨折の有無を感度87.1%・特異度92.1%・AUROC 0.955で識別できた。1段階目で骨折が否定的であった症例に対しては2段階目のDCNNで識別するが、こちらは感度79.0%・特異度71.6%・AUROC 0.810であった。テストデータセットには識別できていなかった22例の隠れた舟状骨骨折が含まれており、2段階のモデルは20例(90.9%)を正しく骨折と識別できた。
同研究のニューラルネットワークによって人間では識別が難しい隠れた骨折を検出できる可能性が示された。X線のみでの骨折の診断能力を向上させることは、金銭的なコスト問題の解決にもつながり、高度な検査機器を有しない一般診療所における診断・治療の質の向上につながることが期待できる。
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