左室駆出率が低下した心不全患者の予後は、治療法の進歩により大幅に改善されてきた。しかし、その死亡率は多くのがんよりも高く、今なお受け入れ難い。英バーミンガム大学の研究グループは、AIアプローチにより「β遮断薬による治療が有効な心不全患者を特定する新手法」を開発した。
学術誌 The Lancetに掲載された同研究では、機械学習によるクラスター分析で、心不全患者15,669人のβ遮断薬治療に対する反応を深く掘り下げた。その結果、洞調律の患者でβ遮断薬の効果が低い群(高齢、軽症状、平均より低い心拍数)が特定され、一方で心房細動を有する患者ではβ遮断薬によって死亡率が15%→9%と大幅に減少した群(若年、左室駆出率が心房細動患者の平均と同程度)が特定された。これらの重要な結果が、有効な治療戦略および医療政策の策定に役立てられることを研究グループは期待している。
駆出率低下のある心不全患者における心房細動はしばしば観察され、その有病率は今後数十年で2倍になるとの試算もある。この予測は医療サービスにとって持続困難な負担となる可能性があり、治療効果が期待できる患者群をより正確に特定することが欠かせない。また、治療効果が期待できないケースには追加の管理戦略を検討し、より個別化されたアプローチを取る必要がある。著者らは「研究に用いた一連の手法は、心不全という枠を越え、他の心血管疾患などにも明らかな可能性を秘めている」と語っている。
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