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自然言語処理を用いた双極性障害のケア改善

ソーシャルメディアや電子健康記録(EHR)から精神的健康状態を評価するため、自然言語処理(NLP)を活用する研究者が増えている。英ランカスター大学の研究チームは、抑うつ状態と躁状態を交互に繰り返す「双極性障害」において、NLP手法によるケア改善を狙った論文に対するスコープレビューを行い、このほど研究成果を公表した。

JMIR Mental Healthから公開されたチームのレビュー論文では、複数の医学論文データベースから「双極性障害とNLPに関連する用語」を系統的に探索し、35報の論文が参入基準を満たしてレビュー対象となっている。うち、双極性障害の予測や分類を狙ったものが25報と最多で、双極性障害の言語的特徴の調査を含むものが13報となっていた。また、倫理的配慮が十分になされているものは21報(60%)に留まった。

研究者らは「現在の先行研究は、双極性障害を持つ人々へのケア提供、ケア改善に向けた言語的分析に焦点が当てられている」とした上で、ソーシャルメディアデータにNLP手法を適用することで、双極性障害の早期発見や臨床評価、自殺防止に役立ち、既存の臨床手法を補完することができる点を強調している。一方、同領域の研究課題において、患者プライバシーが適切に保護されていない可能性を指摘し、研究から生じる社会的影響を考慮した上で、適切な研究デザインと倫理的なデータ利用への議論を求めている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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