患者の全身モニタリングは、血圧や心拍といったバイタルサインの監視が基本となる。一方、それらバイタルサインの測定には精度のばらつきがあるとともに、ポイントごとの測定値は「静的である」という点に一定の限界がある。米ミシガン大学で開発された「単一リード心電図の連続測定信号から血行動態の不安定性を検出する手法」は、従来のモニタリングよりも正確に患者の状態悪化を把握できる可能性が示されている。
Critical Care Explorationsに掲載された同研究では、新しい血行動態モニタリング手法として「AHI: Analytic for Hemodynamic Instability」と呼ばれる、心電図波形の連続測定から患者の不安定性を予測する手法が発表されている。AHIは測定され続ける「動的」な心電図信号から、心拍変動(HRV)の指標を解析し、血圧低下や頻脈の兆候を予測することができる。その結果、AHIは患者の血行動態の不安定さを感度97%、特異度79%で検出することができたという。
著者でミシガン大学医学部の救急医学准教授であるBen Bassin氏は「AHIの非常に高い性能は、臨床的な有用性を示している。これまでのバイタルサイン測定は静的であり、また人為的ミスも含まれるため、検証と解釈を必要としてきた。AHIは動的な”安定”と”不安定”という2つの出力を生み出すことで、これまで臨床医のレーダーに映らなかった患者に対し、早期に医療リソースを投入できる」と語った。チームでは、AHIが心電図パッチなどウェアラブルモニターにも対応し、ベッドや待合室などあらゆる場所を高度なモニタリング環境にできると考え、従来モニタリング頻度が少なかった患者集団にどのような利益をもたらすか、検証を進める。
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