アノテーション不要の医療AI開発へ

米ハーバード大学とスタンフォード大学の研究チームは、胸部X線画像から病変を検出するAIシステム開発にあたって、手動の疾患ラベルではなく、「構造化されていない放射線診断報告書の記述」から学習する新しいAIモデルを開発した。

既存のAI開発のほとんどは、ラベル付けされたデータをモデルに与えて学習させるため、事前に膨大な量のデータに対する「専門家によるアノテーション作業」が必要であった。Nature Biomedical Engineeringからこのほど公開された研究論文によると、CheXzeroと呼ばれる新しいモデルは、学習の前後にラベル付けされたデータを必要とせず、自然記述された放射線診断報告書の記載に基づいたより自律的な学習を行うことができる。また、CheXzeroによって構築された胸部X線画像の病変検出AIは、放射線科医と同等の性能を示したことを明らかにしている。

ハーバード大学のPranav Rajpurkar氏は「我々は、テキストから直接学習することで柔軟なタスクを実行できる次世代の医療AIモデルの黎明期にいる」とした上で、「これまでほとんどのAIモデルは、高いパフォーマンスを得るために、10万枚にも及ぶ膨大なデータの手動アノテーションに依存してきた。我々の手法は、そのような疾患特有のアノテーションを必要としない。構造化されていないテキストの概念が、画像の視覚的パターンにどのように対応するかを最終的に学習することができるものだ」と、成果の革新性を強調する

関連記事:

  1. スタンフォード大学「Trove」- ラベル付きデータを要さない自然言語処理フレームワーク
  2. AIと嘘つき教師 – 著名な公開データに多数のラベルエラー
  3. UCI – 自然言語処理によるEHR分析環境を構築
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事