医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究健康の社会的決定要因を用いた高額医療費の予測

健康の社会的決定要因を用いた高額医療費の予測

米バージニア州リッチモンドに所在するバージニア・コモンウェルス大学の研究チームは、医療費請求データに健康の社会的決定要因(SDOH)などを含めたAIモデルにより、「将来的に高額な医療費を要する個人」をタイムリーに特定可能であることを明らかにした。

American Journal of Managed Careから公開されたチームの研究論文によると、メディケイドのアカウンタブルケア組織のデータを使用し、2018年5月から2019年4月の間に継続的に登録された61,850人の会員集団を対象としたモデル構築と検証を行っている。チームはSDOHデータや医療費請求データ、人口統計データなどから予測モデルを構築し、これを請求情報のみに依存する既存モデル(Chronic Illness and Disability Payment System[CDPS])と比較した。両モデルで高リスク上位5%の会員を比較したところ、AIモデルは一貫して「支出額が最も多くなる会員」をより多く特定するとともに、上位集団全体としてもCDPSモデルによって推定された会員群よりも、支出総額として大きいことを確認している。

チームは「従来型のデータソースに基づく予測モデルよりも、SDOHなど、健康を規定する上流の因子をモデルに組み込むことで、その予測精度をさらに向上させられる可能性」を指摘している。

関連記事:

  1. 健康への社会的決定要因を評価するAI手法
  2. 難聴の社会的背景からうつ病を予測するAI研究
  3. 医療費未払いを防ぐAIアプリケーション
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事