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AIは整形外科診察の文書作成に有効か?

電子カルテは患者情報へのアクセスを良好にするが、医療文書作成に関する事務的負担は一貫して増加傾向にあり、このことは医師の「燃え尽き」の一因にもなっている。米ロスマン研究所の整形外科チームは「整形外科で患者記録にAIを活用した際の質と時間」を評価する研究を行った。

米国整形外科学会(AAOS)によると、同研究は3月7〜11日開催の2023年次総会で発表されている。研究チームは、診察時に文書化補助サービスを利用し、記録の質と時間を評価した。具体的には、1.AIで室内の発言を全て抽出、2.室内または遠隔で同席した記録員による書き起こし、3.診察の録音を外部委託した書き起こし、4.電子カルテ上の音声認識アプリ(VRM)による書き起こし、の4つを比較している。診察シナリオには、親と未成年者が会話したり、患者が話の途中に友人の体験談を挟むことで、AIが混乱しないか判定する要素などを含んでいる。結果として全ての手法が文書の質として良好であった。しかし、AIの書き起こしは特定の質問、例えば「その計画は正しいか?(Is the plan correct?)」のような計画策定に関する内容で著しく低い評価スコアを示し、手動編集を要する水準にあった。また、外部委託サービスやVRMによる書き起こしは、AIベースの記録と比較してより多くの時間を要していた。

研究チームのMichael Rivlin氏によると「医師の仕事量を最適化するため、文章化作業をアウトソーシングする方法を検討し、燃え尽きにつながる負担を取り除きたいと考えた。AIベースの書き起こしは記録の品質を大きく低下させず、負担を軽減する有望なツールである。AIにはいくらかの制約があるが、技術の進歩で改善され続けている」と語った。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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