医療者は勤務時間の3分の1を文書作成に費やす

音声認識AIによる臨床文書作成システムを提供するNuanceは、医療従事者による文書作成業務の実態を調査したレポートを公開している。ここでは、燃え尽き症候群の主要な因子として知られる「文書作成業務」の過大な負荷が明らかとなった。

2022年4月から7月にかけて英国を舞台に行われたこの調査では、医師や看護師、その他の医療専門職など1,000名を超える参加者を対象としている。主な調査結果では、医療従事者は臨床文書の作成に週平均で13.5時間(医師15.1時間、看護師16.5時間)を費やしており、過去7年間で25%増加していた。また全ての医療従事者は、週平均で3.2時間のプライベート時間を臨床文書の作成に費やしており、医師の平均は4.7時間となっていた。

文書作成を巡るネガティブな側面の一方、ドキュメンテーションの様式が過去7年間で大きく変化し、紙とペンを使用した文書作成は半減したこと(可読性向上)、電子カルテに一本化されることによって記載がより構造化されていること(標準化促進)、などが挙げられている。ただし、内容の正確性に大幅な向上が得られていない点は課題の1つとして残っている。Nuanceのソリューションを含め、AIを活用した文書作成支援と燃え尽き症候群の予防には、引き続き臨床現場における大きな需要が伴っている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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