心不全は寛解と増悪を繰り返す慢性疾患であり、従来の評価は静的な指標に依存していた。そのため、日々変動する病態を十分に捉えられず、増悪の早期介入が困難であった。カナダの研究チームは、心不全増悪の早期検出法の開発を目的として、Apple Watchを用いた遠隔モニタリングシステムの有用性を検証し、その成果をNature Medicineに発表した。
研究では、217例の心不全患者を対象とした前向き観察研究(TRUE-HF)を実施し、Apple Watchから取得した心拍数、歩数、運動時間などのデータを解析した。154例を学習用、63例を検証用データセットとして自己回帰型Transformerモデルを構築し、30日間の連続データから最高酸素摂取量(peak oxygen uptake; pVO₂)を推定した。その結果、推定値と心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise testing; CPET)の実測値は高い相関を示した。さらに、pVO₂が10%低下すると予定外受診や入院のリスクが3.62倍に増加し、イベント発生の中央値7.4日前に異常を検出できた。外部コホートでも同様の傾向が確認され、中央値21日前の予測が可能であった。
本研究の意義は、従来は施設での検査が必要であったpVO₂を、Apple Watch由来のデータのみを用いてAIにより日次で推定し、心不全の増悪を事前に予測可能とした点にある。研究者らは、ウェアラブルデバイス由来のpVO₂が、NT-proBNPやNYHA分類などの静的指標よりも優れたリスク層別化指標となる可能性を指摘している。一方で、本指標のエンドポイントとしての妥当性および臨床実装における有効性については、多様な集団を対象とした前向き介入試験による検証が必要である。
参照文献:
Remote monitoring of heart failure exacerbations using a smartwatch
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