医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例大規模GPU不要・少数画像から学習したAIで精巣組織解析を自動化

大規模GPU不要・少数画像から学習したAIで精巣組織解析を自動化

小児がんの生殖温存研究や精子形成研究において、精巣組織の免疫蛍光(IF)画像解析は欠かせないが、従来の手動アノテーションは熟練者でも時間を要し、観察者間のばらつきも課題となっていた。研究チームは、既存の画像解析ソフトウェアを用い、多層パーセプトロン型人工ニューラルネットワークと畳み込みニューラルネットワークを組み合わせた自動解析ワークフローを構築し、精細管の自動セグメンテーションから細胞分類・定量まで、1画像あたり数秒〜60秒以内で処理できることを示した。英国の研究チームらが、Reproduction and Fertilityに報告した。

本研究では、オープンソース病理画像解析ソフト QuPath を用い、多層パーセプトロン型人工ニューラルネットワーク(ANN-MLP)で精細管や背景領域を学習させた。学習にはわずか6画像、各画像につき3カ所程度のアノテーションしか必要としなかった。細胞分割には従来型のWatershed法と、事前学習済みCNNモデル StarDist を比較し、検出細胞数自体に有意差はなかったものの、StarDistは重なった核の分離精度に優れていた。解析対象には13歳患者由来のヒト精巣組織やマウス組織を使用し、セルトリ細胞マーカー(SOX9)や精原幹細胞マーカー(MAGE-A)などを分類した。また、自動化ワークフローではSOX9陽性細胞数と管面積の間に有意な正相関(r²=0.56、p=0.03)が保たれたのに対し、手動カウントでは相関が失われた(r²=0.26、p=0.35)。さらに、Hoechst核染色強度を解析することで、細胞周期に基づく分裂指数の推定も可能とした。

著者らは、深層学習ベースの病理AIは大量アノテーションや高性能GPUを必要とすることが多い一方、本手法は既存のオープンソースソフトウェアで一般的なノートPCでも高精度かつ再現性高く動作し、研究現場への導入障壁が低い点を強調している。自動化による処理時間の大幅な短縮と観察者バイアスの排除は、大規模コホート研究や臨床検体の系統的評価への応用を大きく広げる可能性がある。今後は、小児がん治療後の妊孕性温存研究や、生殖細胞幹細胞の評価、病理画像解析の標準化などへの応用が期待される。

参照論文:

Machine learning and automation methods for the segmentation, classification and quantification of testicular tissue sections

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本吉絢
本吉絢
東京女子医科大学卒(MD)、同大学医学研究科博士課程修了(PhD)、米University of Washington研究員を経て、現在は神戸アイセンターにてリサーチアソシエイトとして眼科AI研究に取り組む。趣味は自然と猫や馬など動物たちを愛でて静かに過ごすこと。
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