医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例自殺リスクの高い通話をAIが自動検出―心理支援ホットライン音声を解析し緊急対応支援へ

自殺リスクの高い通話をAIが自動検出―心理支援ホットライン音声を解析し緊急対応支援へ

精神的危機を抱えた人々の相談先である心理支援ホットラインでは、オペレーターが通話ごとに感情状態と自殺リスクをリアルタイムで評価している。しかし、相談件数の増加に対して訓練された専門職が不足しており、対応の質や一貫性にばらつきが生じていた。こうした課題を解決すべく、中国の研究チームは、大規模言語モデルを用いたAIシステムが、ホットライン通話から高リスク発信者を自動検出できるかを検証し、PLOS Digital Healthに発表した。

研究では、2022〜2023年に心理支援ホットラインへ寄せられた1,057件の通話が解析対象となった(うち526件が高リスク通話)。研究チームは、音声データを解析するWave2Vec 2.0やWhisper、文字起こしテキストを解析するRoBERTaやGPT埋め込みモデルを比較した。その結果、テキストベースのGPT埋め込みを用いた深層学習モデルは、高リスク通話の判別においてF1スコア80.48%を達成し、音声ベースのモデルを大幅に上回り、少数例学習(few-shot learning)を用いたGPT-4oやDeepSeek-R1も同等レベルの性能を示した。また、専門家による評価ではGPT生成の説明文の臨床的妥当性が確認された。

著者らは、自殺リスク検出においてテキストの意味情報が音声特徴よりも本質的な予測因子であり、LLMが限られた学習データでも高度な推論能力を発揮できる点を重要な成果として挙げている。一方で、複雑で微妙な感情変化を十分に捉えられない課題も確認された。今後は、LLMがホットラインオペレーターの補助として機能し、緊急度の高い通話を優先的にトリアージする支援ツールになりうることが期待される。

参照論文:

Automating multi-label crisis detection in psychological support hotlines with pre-trained models

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本吉絢
本吉絢
東京女子医科大学卒(MD)、同大学医学研究科博士課程修了(PhD)、米University of Washington研究員を経て、現在は神戸アイセンターにてリサーチアソシエイトとして眼科AI研究に取り組む。趣味は自然と猫や馬など動物たちを愛でて静かに過ごすこと。
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