心臓において左心房から受けた動脈血を大動脈に送る役割を果たす左心室は、通常円錐形を呈しているが、背景疾患によってこの形状に変化をきたす。特に丸みを帯びて「球形度(sphericity)が高まる」変化について、米スタンフォード大学のチームは、機械学習手法を用い「左心室の球形度から心疾患リスクを予測する」研究を行っている。
Med誌に発表された同研究では、英バイオバンクに含まれる38,897人の心臓MRIデータをディープラーニングモデルで解析し、「左心室の球形度の上昇が心筋症・心房細動・心不全といった心疾患罹患の危険因子である」ことを示した。その影響は、球形度の指数が標準偏差でわずか1ポイント増加すると、10年間での心筋症の罹患リスクが47%増加し、心房細動の罹患リスクが20%増加するという。さらにバイオバンクの記録と照合したところ、球形度は心疾患の遺伝子マーカーと有意な相関関係にあることも明らかになった。
著者のShoa Clarke博士は「心疾患を発症した患者では心臓がより球形に見えることは、循環器学を実践するほとんどの人が知っている。本研究のポイントは、現在の医用画像には使われていない情報が含まれていることだ。これらの画像を見る新しい手法を学び、多くの情報を引き出そうとすることで、医学的な恩恵が受けられる」と語った。
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