医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究「心臓の丸み」から心疾患リスクを予測

「心臓の丸み」から心疾患リスクを予測

心臓において左心房から受けた動脈血を大動脈に送る役割を果たす左心室は、通常円錐形を呈しているが、背景疾患によってこの形状に変化をきたす。特に丸みを帯びて「球形度(sphericity)が高まる」変化について、米スタンフォード大学のチームは、機械学習手法を用い「左心室の球形度から心疾患リスクを予測する」研究を行っている。

Med誌に発表された同研究では、英バイオバンクに含まれる38,897人の心臓MRIデータをディープラーニングモデルで解析し、「左心室の球形度の上昇が心筋症・心房細動・心不全といった心疾患罹患の危険因子である」ことを示した。その影響は、球形度の指数が標準偏差でわずか1ポイント増加すると、10年間での心筋症の罹患リスクが47%増加し、心房細動の罹患リスクが20%増加するという。さらにバイオバンクの記録と照合したところ、球形度は心疾患の遺伝子マーカーと有意な相関関係にあることも明らかになった。

著者のShoa Clarke博士は「心疾患を発症した患者では心臓がより球形に見えることは、循環器学を実践するほとんどの人が知っている。本研究のポイントは、現在の医用画像には使われていない情報が含まれていることだ。これらの画像を見る新しい手法を学び、多くの情報を引き出そうとすることで、医学的な恩恵が受けられる」と語った

参照論文:

Deep learning-enabled analysis of medical images identifies cardiac sphericity as an early marker of cardiomyopathy and related outcomes

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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